はじめに

どこでもロケハンとは?

「どこでもロケハン」は、Xアカウント++++(@sharp_maker)さんが公開されている、漫画背景の検討を目的とした無料のWebベース3Dツールです。地図データや標高データをもとに、世界各地の実在する街区を3D表示し、漫画向けの線画・トーン調の画面として確認できます。

一般的な3Dモデリングソフトのように、建物を一から作るためのツールではありません。実在する街並みを舞台に、人物の視点、カメラ位置、レンズ、光の向きなどを変えながら、背景資料や構図の候補を探す「ロケハン」に特化しています。

漫画では、物語に合う場所を選ぶだけでなく、キャラクターをどこに立たせるか、どの方向から見せるか、読者に空間をどう伝えるかまで検討する必要があります。どこでもロケハンは、実在する街区を歩くように確認しながら、こうした構図検討を行える点が特徴です。

どこでもロケハンでできること・できないこと

どこでもロケハンの画面には、広さ、線、輪郭、光の方位・高さ、影、空気感、トーン、レンズ、目の高さなどの設定が用意されています。街並みを3Dで確認し、漫画背景向けの線画・トーン表現に寄せながら、カメラアングルを探せます。

一方で、専用の3D背景制作ソフトや3Dモデリングソフトのように、建物の形状を自由に編集したり、室内の家具を細かく追加配置したりする機能を主目的としたものではありません。実在データをもとにした街区の確認に向くため、架空の室内、特殊な建築、細部まで指定した背景を作る場合は、別途作画や3D素材が必要です。

【重要】商用作品で使う前に利用規約と素材条件を確認する

どこでもロケハンを商用漫画や同人誌、広告制作などに使う場合は、ツール自体の利用規約、地図データの利用条件、出力画像の扱いを必ず確認してください。画面にはOpenStreetMap contributors、OpenFreeMap、OpenMapTilesに関する表記があり、参照データのライセンスにも注意が必要です。

また、実在する建物や店舗、看板、商標、特徴的な外観をそのまま描く場合は、著作権以外の権利やトラブルにも配慮が必要です。実在の場所を参考にする際は、必要に応じて名称や意匠を変更し、作品の設定に合わせてアレンジすることを検討しましょう。

実際使って検証

起動から背景を表示するまでの手順

どこでもロケハンは、専用ソフトをインストールするのではなく、Web画面から利用する形式です。基本的には、場所を検索し、表示範囲を選び、3D画面内で視点を調整して構図を探します。操作の流れは次のように整理できます。

  • 目的の地域・街区を検索する

  • 表示したい範囲を選ぶ

  • 3D空間内を移動して近景にしたい場所を決める

  • 目の高さやレンズを調整する

  • 線、輪郭、影、トーンなどを調整する

  • 必要な構図を画面保存し、設定値を記録する

※検索機能が一時的に制限されることもあるため、利用時点の案内表示は確認が必要です。

あおり・俯瞰・パースの確認精度

視点を上下させ、レンズを調整できるため、あおりや俯瞰の構図候補を探す用途と相性があります。とくに、街路、交差点、坂道、建物群など、複数の建物が画面内に入るシーンでは、消失点の方向や奥行きの出方を確認しやすいでしょう。

ただし、地図データ由来の3D表示は、建物の細部形状や屋根、看板、窓、植栽まで完全に再現するものではありません。パースの土台や空間構成の確認には有効ですが、最終的な背景作画では、資料写真や追加の観察を組み合わせる必要があります。

実際に漫画の背景として使用出来るかどうか? クリスタの「レイヤーのLT変換」との比較

どこでもロケハンからPNG形式で出力し、クリスタで木と空を追加しました。正直そのまま背景として使用するには少しチープさが目立ちます。また出力時に生成されるトーンもWEB上でのピクセル準拠の見た目となる為、商業用漫画のトーンとして使用するには画質が足りない印象です。

実際に同様のロケーション現場の写真を用いて、クリスタの「ライン抽出」「レイヤーのLT変換」を使用して作成した背景画像と比較しましたが、特定の場所を示すような背景としてのクオリティは全く異なるものとなります。

建物のデザインの違いは意匠権等の観点から意図的に変えているという事なので、忠実に再現するのであればある程度の加筆が必要になります。また、看板やロゴ等も意図的に外されているようです。

これらは、あくまで1枚の背景としてのクオリティを比較したもので、実際には使用用途を分ける事で即戦力となりうる実力を持っています。

以下のような用途で使用するのであれば、今すぐにでも作業に取り入れる事が可能です。

  • アングル・パースの確認用
  • 背景描画の下絵、ベース絵
  • 街全体の俯瞰描写(引き絵)
  • 遠方の背景パーツ(密度を上げる)

また使用感としては「木」や「人」「車」等はオフにして、後からクリスタ等で書き加える方が使いやすいと感じました。

まとめ

無料3D背景ソフトとしてかなり便利!

どこでもロケハンは、世界の実在街区を3D表示し、漫画向けの線画・トーン調で構図を探せる、ロケハン特化型の無料ツールです。背景を完成させるための万能ソフトではないものの、屋外シーンのパース確認、視点探し、ネーム段階の構図検討に強みがあります。

特に、背景の構図で迷いやすい人、実在の街並みを参考に漫画を描きたい人、クリスタでのLT変換前にカメラワークを固めたい人にとって、有力な選択肢です。どこでもロケハンで空間の土台を作り、CLIP STUDIO PAINTで線画化・加筆・トーン処理を行うことで、背景制作をより効率的に進められるでしょう。

また制作者の++++(シャープ)さんはこれ以外にも様々な漫画制作補助ツールを作成されています。今後の活動に期待しつつ、これまで発表されたツールも一つ一つ触ってみたいと思います。

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